「なぁ、蓬。ごめんな」
「え?いきなり何の話ですか?」
「親父のこと、あんな風に言って。…向こうに行ったらさ、定食屋で会ったおっさんにも、親父のいた寮でも、お前のことを聞かされた。必死になってたって」
「え、あちゃあ。口止め忘れてました…」
―本気でそんなことを言う蓬は、やっぱりお人よしで、一生懸命だ。
恥ずかしがるように少し視線をずらす蓬は、俺を見るとふわっと笑みを浮かべる。
「お父さんと仲直りできましたか?」
「あぁ、お前のおかげだ。ありがと、蓬」
「はい。…これで情報屋はお役目ごめんです」
「…お疲れ様。…ありがと、ハル」
俺を救ってくれた情報屋。その幕をまさか俺が閉めることになるなんてな。
蓬は首を横に振って、依頼完了ですってほっとしたように微笑んだ。
少し深呼吸。
ほら、言わなきゃ。
ずっと繋いできたんだ。だから、伝えるんだ。
思いを、約束したことを。