「ごめんなさい」

 耳に飛び込んできたのは断りの言葉。

 視線を向ければ、蓬はうつむいていて表情が読めない。でも、雷斗はどこかすっきりした顔をしていた。

「…ありがと、よもちゃん」

「はい」

「…秋空と幸せにね」

 蓬とすれ違う瞬間、雷斗の声が風に流れて聞こえてきた。

 あいつ…。バイクで立ち去っていく雷斗を見送る蓬はこちらに背を向けたまま。

 そんな背の前に立ち、名前を呼ぶ。

「…蓬」

「…お帰りなさい」

 振り返った蓬は、悲しげな笑みを浮かべていて、言葉に詰まった。