「秋空、寒く、ないか?」
「別に」
夕飯の席では、なぜか蓬の話や俺自身のことを質問攻めにされて正直疲れた。
そして、明日の早朝には現場に入って、明日は夜中近くまで戻って来れないということも知って、思わず親父を睨んだ。時間なさすぎだろ。流石に明日には帰りたいし。
寝るときでさえ、同室の人は他の部屋に泊まりに行ってくれて、部屋には俺と親父だけ。それに妙に緊張して、眠れない。
親父も同じなのか、全然寝息は聞こえてこない。
「…親父さ、働いた金、ほぼ俺に送ってねぇか」
「え?」
「親父、作業服2着しかねぇじゃん。それに、なんかすっげぇ痩せてるし。…そんなに親父が切り詰めなくても、俺はちゃんと食ってるし」
「…痩せてるのは、薬の反動だ。…それに、息子には好きな進路に進んでほしいしなぁ」
「別に大学行かなくてもいいし」
「秋空、お前が大学行かなくても、この生活はやめるつもりはないよ。仕送りも、ちゃんと続ける」
「…親父は、俺にどうしてほしいわけ?」
「生きていてくれれば。それでいい。…その上、幸せに生きてくれたら、もうそれ以上望まない」
なんだよそれ。あいまい過ぎるだろうが…。
やりたいことなら、ある。どうしても叶えたいことは。
だけど、そんなこと、できるのか分からないし、蓬を巻き込むんじゃねぇかって思うと、言っていいのか分からない。
だから、大学も悩んだままだ。