「…俺は、ずっと親父に会いたかった。…会って、文句言って、会話がしたかったんだ。なのに、あんたはずっと一方的に連絡を寄越すばっかだった」

「…怖かったんだよ。お前に会うのが。許されるはずがない、罪を背負って生きて行こうと決めたとき、お前に会うのは、俺のご褒美になってしまうから」

「なんだよそれ。…結局、あんた自分のことばっかじゃねぇか!12年前と何にも変わってねぇじゃん!!」

 ほんとに、変わってない。外見が別人でも、全然…。

 親父はうつむいたまま、ははっと乾いた笑い声をこぼす。

「秋空は、いい友達を持ったんだね」

「は?」

「…蓬ちゃんにも同じことを言われたよ。あんたは自分勝手だって。秋空のこと考えろって」

 蓬、ほんとに説得しにこんなとこまで…。

 親父から蓬の名前が出たことでやっと実感がわく。

 親父は、恐る恐る顔を上げて、引きつったような笑みを浮かべる。

「秋空、お前には苦労ばっかかけたな。…ほんとに、父親失格だ」

「…っは、親父が父親失格じゃなかったら、意味わかんねぇ」

 話したいことも言いたいことも山のようにあったはずなのに、何を言ったらいいのか全然わからない。

 ぎこちない会話ばかりが続いて、部屋の外から呼ばれるまで、ぎこちない会話を続けた。