意味が分からないまま囲まれていると、奥のほうから逃げんじゃねぇとかいう声が聞こえてくる。

 そちらに視線を向けると、管理人の叱られてる1人の男の人がいた。

 細っこい体で、この体格のいい人たちの中では随分小さく見えるその人は、俺のほうを向いて、目が合うと息を呑んだ。

「…親父?」

「あ…秋空」

 居心地が悪そうに、俺のほうを向いてうつむく。

「ほら、行け」

 誰かに背中を押されて足を進める。親父の目の前まで来て、少しあっけにとられる。

 薬の影響か、何か分からないけど、俺より背が低い。それに、確か50近いはずなのにもっと上の年齢に見える。

 5歳のころは、怖くて仕方なかったはずの人が、全然怖くない。

 むしろ、何で怯えていたんだろうと思えるほどに、親父の姿は弱々しかった。