呼吸を整えていると、ピンポンパンポンと言う放送の合図がなる。

 咳払いの後、少しがさがさという音が入った。

『えぇ、305号室の神野!!息子が来てんだ!!さっさと正面玄関に出頭しやがれ!!!』

 キーンっと言う音が、放送開始の音にかき消されて消える。…なんだこれ。

「すぐに来るからねぇ」

 ニコニコするじいさん。…ありえねぇ。

 なんと言っていいかわからず苦笑いしていると、なぜか階段のほうから地響きが聞こえてくる。…地響き?

 階段のほうに視線を向けると、なぜかたくましい体をした男たちが駆け下りてきた。

 な、何だ!?

「おぉ!神野の息子だ!」

「「「おぉ…」」」

 あっという間に囲まれて、ものめずらしそうな目で見られる。何なんだいったい…。

「あいつほんとに息子いたんだなぁ」

「苦労しただろ?」

「ガツンといってやれよ。何かあったら俺らに言えよ?」

 なんでこんなに歓迎されてるんだ…?