「遠慮すんなって。な?」

「バスの時間があるのでっ」

「何線だ?送っててやるよ」

「結構ですって言ってるじゃないですか!」

「兄ちゃん、奢られとけよ。この人ほっとけねぇ人なんだ」

 お店の人もう日常だみたいな顔してるのは何でだよ!

 おっさんもおっさんで伝票をつまんでニコニコしてるし…。

 運ばれてきたから揚げと出し巻き卵。なぜか俺が座ってた席に置かれるし…。

「前も兄ちゃんみたいに捕まってる子がいたなぁ。あん時は女の子だったから、この人じゃなかったら警察呼ぼうかと思ったよ」

「呼ばれたことあるけどな!」

「あるんすか…」

 女子にも声かけるって、ちょっとこの人を疑う。

「兄ちゃん、奢られとけ。そしたらこの人落ち着くから。…なんて子だったっけ?ちょこちょこ来てたけど最近来ないよな」

「あぁ、せっかく警戒心解いてくれたんだけどなぁ。ヨモギちゃん」

「ッ…え、はぁ!?」

 無理やり座らされて、どうしようかと悩んだ瞬間、聞きなれた名前が飛び出してきて思わず声を上げる。

 ヨモギって…。まさか、蓬のことじゃ…。いや、いくらなんでもそんなこと…。