「よもちゃん、俺と、付き合ってくれませんか?」

 まっすぐで、悲しいくらい泣きそうな顔で、笑顔を作った雷斗くんは、とても暴走族の総長なんかには見えなくて、ただの男の子でした。


 ずっと、優しくて、いざというときは飛んできてくれて、心配性で、まっすぐで、誰かのために一生懸命になれる。そんな人。

 分かってる。その思いを。分かってる。その難しさを。

 だからこそ、私はその思いを踏みにじることになるということを。


 ポケットが震える。それは、合図。言わなきゃ、行けない。

 顔を上げる。視線がまっすぐにぶつかる。

「ごめんなさい」

 そう、言うしかないことを。私は分かってる。

 雷斗くんの表情は悲しさを見せたまま。変わらない。

「…ありがと、よもちゃん」

「はい」

「       」

 風に溶けて消えた言葉。走り去っていくバイクの音。

 1人、夕日に染まる公園を見つめる。

「蓬」

 背後からの声。

「…お帰りなさい」


 ―大切な人。