「…蓬、今日無理に呼び出したのは、話をするためだけじゃない」

「はい?」

「お前の、母さんからだ」

 宅配で、拘留所に届いた小包。
 中身は渡されることなく、手紙だけ看守は持って来た。


『大宮さん

 テレビを見ました。蓬は、あんなに立派に育っていたんですね。
 まだ、若い方と見えましたが、蓬の幸せそうな顔に私はもう必要ないと感じました。

 ですが、高校生になった蓬にどうしても、贈り物をしたいです。
 ですが、私が会いに行けば蓬を更に混乱させてしまうでしょう。なので、大宮さん、私の代わりにあの子に届けてください。

 私と、蓬が、親子であったというたった1つの証を、あの子に持っていてほしいのです。

 わがままで申し訳ありません。これで、連絡をするのは最後にいたします。
 なので、どうか蓬に誕生日を祝ってあげてください』


 4月20日…今日が、蓬の誕生日だ。

 差し出した手のひらサイズの小包の中身は知らない。
 でも、彼女の願いをどうしてもかなえてやりたかった。

 それが、唯一俺のできる罪滅ぼしだから。