「蓬の居場所を掴んだのは去年の10月ごろ。11月の上旬に晴野さんに会った」
蓬は険しい表情を消し、ただ困惑するような顔をしていた。
しっかり話すべきだと言う理由はこういうことだったのかと、焦っていた自分が笑えてくる。
「仮にも、お前を育ててくれた人だ。お礼も言いたかった。…そこで、更に勘違いさせるようなことを言った」
「…なんて言ったんですか」
「14年前から行方の分からなくなった娘が、あなたに引き取られているということは知ってる。娘を返してほしい…と。それから、会社の後継者を子どもに継がせたいと…」
「…あなたが父親なんてただの屈辱です」
困惑していた表情が再び曇る。
それにしても、この子は本当に口が悪い。
「勘違いも何も、それじゃ、1回見捨てた子どもを後継者欲しさに取り戻しに来た。そう思われるって思ってなかったんですか」
「蓬とは血の繋がった親子だ。親として、当然のことを…」
「だから、…はぁ、もういいです。とりあえず、あなたの価値観がぶっ飛んでいることを再確認しました」
蓬は疲れたようにため息をつく。
…そんなに呆れられるほど俺は親として失格なのか…。