「なぁ、渡来」
「なに?」
「あのさ、よかったらでいいんだけど…」
「うん?」
「勉強、教えてください」
「うん…え?」
相槌を打ってるつもりだったんだけど、思わず耳を疑う。
晴野くんが勉強を教えてくれ?…そんな馬鹿な。
噂で聞いただけだけど、晴野くんの順位は学年2位。そんな子が勉強を教えてくれなんていったい何の冗談なんだ…?
晴野くんはふざけてる様子が一切ないし、いったいどうして…。
「晴野くん勉強できるよね?」
「…実は、最近まで停学食らってて授業でてねぇんだわ」
「は?」
「引くよな。あはは…」
何の冗談と言いかけてやめる。
そういえば、そんなことを誰かが話していたような…。
停学っていったい何をやらかしたんだか。
中学のころから生徒からも先生からも信頼の厚かった晴野くんには縁遠いことだと思ってたのに。
でも、彼のことだからなんか事情があるんだろうな。別に嫌いじゃないし、助けてあげてもいいかな、なんて軽い気持ちで笑う。
「僕でよければ」
「え?ほんとか?助かるよ」
晴野くんが笑う。そんなわけで、期末テストまでの間、授業後の図書室で晴野くんと勉強することになった。