『どういうつもりだ!!』

 彼女と出会って半年が過ぎた頃、俺は1代発起するために会社を辞めることにした。
 もちろん、会社は大反対だったけどな。押し切った。

 いつまでも、あんな子会社で自分の技術を奪われるのが性に合わなかった。
 だから、自分で会社を立てることにした。

 そして、会社に辞表を出したその足で、彼女と会った。

 …別れの話をするために。

『すまない』

『…そうですよね。私みたいな人より、大宮さんには似合う女性がいると思います』

 彼女は終始うつむいたまま、理解を示してくれた。

『そうじゃない。これから、俺は会社を立ち上げるつもりで…キミを、苦労させたくないんだ』

『…あなたのプライドが、許さないんですね』

『…すまない』

『いいんです。大宮さんと一緒にいれたこと、嬉しかったから。…もし、あなたのプライドが邪魔しなくなって、それでもまだ、私を思ってくれたなら、いつか、迎えに来てくれませんか?…私、待ってますから』

 彼女と約束はできなかった。
 自分に自信がなかったのと、彼女なら、すぐに相手が出来ると思っていたから。

 それからは、会社を立ち上げるために駆けまわって、彼女のことはすっかり忘れていた。

 彼女が、蓬をはらんでいたことも知らずに…。