『あ、また来てくれたんですね』

『会社近いので…』

『他のお店もあるのに?』

 気づけば、昼休みは必ずここへ足を運んでいて、彼女とはすっかり顔見知りになった。
 ただ、彼女と俺の中の違いと言えば、彼女にとって俺はただの常連の1人であったということだった。

『あの』

『はい?』

『ご結婚されているんですか』

『へ?いやいや、私みたいなのが結婚だなんてないですよ。ついでに男性と付き合ったことすらないのに』

『は!?その容姿でか!!?』

『バカにされた気分です』

『い、いや…そうじゃなくて、あなたのように美人が結婚はおろか、付き合ったこともないなんて…』

 自分の口の下手さをこの時ばかりは呪った。

 女性はきょとんとした顔をしていたけどな。