「よも!!」

 病院の廊下に響き渡る声。視線を向ければスーツ姿のお父さんが、息を切らしていて…。

 自分がどんな顔をしてるのか、分からなかった。

「…なんで、来たの?」

「大宮さんから連絡をもらった。…大丈夫か」

「…ねぇ、清牙さん」

 ビクッとお父さん…清牙さんの手が震える。頬に触れた手が温かい。

「…私、帰らなきゃ」

「…よも」

「遥人を1人にできない」

「…遥人くんも、うちに…」

 首を横に振る。

 ダメなんだよ。そんなことしたら、遥人はずっと1人のままなの。だから、私が遥人の家族にならなきゃダメなんだ。

 遥人をなだめて離れる。立ち上がって、清牙さんに微笑む。

「今まで、育ててくれてありがとうございました。本当に、ありがとうございました」

「…よも」

「このお礼は、必ず、返します。…遥人と2人で生きていきます」

「ッ…」

 清牙さんの表情が歪む。

 やっぱり、自分がどんな顔をしてるのかわからなかった。