振り返ると、母親は穏やかに笑っていて、父親はうつむいてる。

「…なんで、嘘ついたの」

「…」

「なんで!…うつ病だって、頷いたじゃない!!」

「…言えなかった」

「また隠し事なの!?あなたはいつもそれで、誤魔化して…。なんで…」

 分からない。勝手に涙が出てきて止まらなくなる。

 やだよ。なんで泣いちゃうの…。

「…はは、あんたほんとに勝手だよな…」

「遥人…」

「どうやって生きてけって言うわけ?…ッじいちゃんもばあちゃんももういないのに!!俺に、どうやって生きてけって言うんだよ!!」

「遥人の名前で貯金はしてあるよ。だから…」

「ッ…意味、わかんねぇよ」

 座り込んでしまったような音が響く。

 わかんないよ。意味、分からない…。

「…蓬、遥人。…怜さん、ありがとう。最期に会えて嬉しかった」

「ッ!?宮子さん!?」

「ッ母さん!?」

「…あ…」

 さっきまでそこで笑っていた人が、倒れてる。

 揺さぶっても、起きない。目を、覚まさない…。