と思っている間にアパートに到着しました。

 階段を上がって、遥人がドアを開ける。

「連れてきた!」

「お、お邪魔します」

「姉ちゃんそんなこと言わなくていいから」

「いや、そこは言うべきでしょう!?」

 なんの争いをしているのやら。中から返事はなくて、玄関を上がる。

 目の前に部屋が2つ続いてる。その部屋の奥にうなだれている女性と、その女性の正面に座る父親の姿。

「…」

 頭を上げていないから分からないけど、あぁやっぱりって感じかな…。

 どこか納得してしまう。この人が母親だって。この人が、私を捨てたんだって…。

「蓬、こっちに来なさい」

「何人ん家で堂々としてんだよ」

 文句を言いながら遥人が奥の部屋に入っていく。遥人の視線が冷えていく。