「なんで、14年間もお前を探さなかった…。探せなかった理由を、話そう」

「…探せなかった?」

「あぁ。…蓬、俺と、蓬の母親が籍をいれなかったのは知っているな」

「今さらそれを言いますか」

「聞きなさい。…17年前、お前の母さんと出会った。30歳の時の話だ」

 父親はどこか懐かしむような顔で私を見る。
 まるで、私を通して母親の姿を見るように。それが気持ち悪くて、視線を逸らす。

「当時、母さんと出会ったのは会社近くの定食屋でね」

「そんな話、聞きたくない」

「いいから。…会社の昼休み、社員食堂がなかったから、ほとんどその店に行っていたんだ。母さんは、そこで働いていた。パートだった」

 聞かない権利はないそうです。

 仕方なく、水の入ったグラスを両手で包み込んでうつむく。