「もし、本当の両親が来たらちゃんと蓬は返す。でも、このまま警察に預けたら、蓬は一生親に巡りあえねぇかもしれないんだろ?なら、その開いた穴は俺が塞ぐ。あんたたちがこいつを傷つけた。傷つけられた相手に預けられて蓬は安心して生きていけんのかよ」

 広西は黙り込んで、俺の腕の中にいる蓬を見つめた。

 婦警はさっきから一切口出ししない。

 だけど、その目はどこか俺を後押しするような優しい印象を持った。

「どうせ、警察では預かっておけないんだろ?なら、拾った俺が責任もって預かる。それじゃ、ダメなのかよ」

「…そんなことは、認められていないんだ。晴野くん、分かってくれ。これは法律で決められてるんだ」

「なら、蓬の幸せを保障する法律だってあるんだろ?でも、あんたたちじゃ、蓬を幸せにすることはできない。俺は、こいつを幸せにする。ちゃんと育てる。しつけもちゃんとして、大学進学できるくらい優秀な子に育てる。それでも、蓬の幸せを保障する法律は優先されないのかよ」

 広西の肩が跳ねた。不意を突かれたような、そんな顔だった。

 しばらく黙った広西は、意を決したように俺を見つめてきた。

 もうそこに権威もなにもなかった。