「…せーが、おにいたん…」

 弱々しい。聞き逃してしまいそうなほど小さな声。

 振り返れば、桃に抱かれた蓬が、疲れたような顔で、俺をじっと見つめてきていた。

 手を伸ばせば、大人しく俺の腕の中に入った蓬は、弱々しい力で俺の服を握る。

 傷だらけの小さな手が、精いっぱいの力で服を掴んだ。

「…蓬、俺の娘になれ」

「っな…」

「はぁ!?」

「…?」

 俺が蓬に言ったひと言は、広西も、剣人も驚かせる。

 訳が分かっていないのか、蓬は不思議そうな目で俺を見る。

「ずっと一緒にいよう。苦労かけるかもしんねぇけど、絶対に幸せにしてやる」

「清牙、それプロポーズみたいよ」

「じゃ、プロポーズでもいいな。蓬、どうだ?俺がお前を守ってやる」

「…うん」

 たぶん、意味わかってないな。

 でも、蓬はこくんと頷いて、甘えてきた。