「…気が済むまで殴ればいい。殴って、キミたちは家に帰りなさい」

「あぁ、帰るよ。だけど、もうあんたたちに蓬はわたさねぇ」

「晴野くん」

「あんな蓬見せられて、また信じろって?悪いけど、無理だ」

「児童誘拐の犯人になるか」

 初めて脅すような迫力で広西は睨んできた。

 さすがの剣人も表情を硬くさせて、やめろと視線で訴えてくる。

 また繰り返せって言うのかよ。助けられる奴を目の前にしておきながら見ないふりして、ほっとけって言うのかよ。

 …あいつみたいに、もう2度と戻って来なくなるかもしれないのに…。

「…いいぜ。あいつを守るためなら、誘拐でも、監禁でも好きな犯人にさせればいいさ」

「清牙!!」

 咎めるような剣人の声も無視して、広西を睨む。
 広西も、鋭い目つきで俺を睨みつける。

 長い間の沈黙が俺たちの間を抜ける。

 その沈黙を破ったのは、診察室のドアが開く音だった。