「あんたは、警察を信じろって言った。必ず親元に帰すと、約束するって、言っただろ」
「…言ったな」
「あんたの約束は!蓬を家に帰すことだけなのかよ!!たった3日だぞ。俺があんたに蓬を託してたった3日しか経ってないんだぞ!!なのになんでああなるんだよ!?あんなにボロボロになるまで、なんであんたたちは蓬をほっといたんだよ!!!」
「…蓬ちゃんだけじゃない。あの施設に預けられた子は、みんな傷ついた」
頭の中で何かが切れる音がした。
いつもなら、止めてくるはずの剣人も動こうともしなかった。
だから、抑えもないまま広西の顔を殴りつけた。抵抗も、避けることも、何もしなかった。
「広西さん!?」
「大丈夫だ」
駆け寄ってきた婦警をなだめた広瀬は、俺の殴った左頬をかばうこともせず、強引に口の端についた血をぬぐって立ち上がる。
その目は俺を責めるような目ではなくて、殴られて当然だ。お前は何も悪くないと言外に告げる眼力を持っていた。