「酷い…」

「警察は?」

「広西さんとあの時の婦警だけだ」

 痛ましげに蓬を撫でる桃にこの場を預けて、剣人と病室を出る。

 救急外来の診察室の1室を借りたせいか、部屋を出ると険しい表情を浮かべた広西さんと婦警しか、その場にはいなかった。

「…晴野くん、1度までならぬ2度も…」

「どういうことですか」

 形式的なお礼文句なんかいらない。知りたいのはなぜこうなったのかということだけだ。

 視線を逸らした婦警とは反対に、広西さんが視線を外そうとするそぶりはなかった。

「なんで、こんなことになってるんですか」

「…捜査の手に人手がかかって、蓬ちゃんは一時保護施設に預けられていた。そこの内情まで、目を届かせるほど人員に余裕が…」

「そんな、言い訳聞きたくねぇよ!!」

 そんな言い訳、蓬が傷ついていい理由になんかならない。

 広西さんは表情を変えぬまま、俺を見つめてくる。

その余裕さがムカついて、まるで自分のせいではないといっているような目が、信じられなかった。