「おい、清牙どこ行くんだ」

「病院に連れてく。警察に言っといてくれ」

 気絶したままの蓬を連れて、清牙は歩いて行ってしまう。

 救急車を呼ぼうなんて、言えなかった。
 関わるなって、警察に預けろなんて、言えなかった。

 清牙の腕の中でぐったりしたまま傷だらけの手足を投げ出している蓬の姿を見て、そんなこと言えるわけなかった。

「清牙、どうすると思う?」

「…俺より颯人の方が分かってるんじゃないのか」

「そうでもないよ。清牙のこと、ほぼ理解してるのなんて、桃だけだから」

「…そうだな」

 ここにはいない桃がこの場にいてくれたらと思う。

 せめて、清牙を1人で病院に行かせることは阻止できたのに。

 清牙が何を言い出しても、警察相手に何をしようとも止められない。それくらい、あいつの中で何かの決心がついてしまったはずだ。

 遠くから聞こえるサイレンの音を聞きながら、これからのことを考えずにはいられなかった。