気づいた時にはもう親子の前まで行っていた清牙を止めることなんかできなかった。
母親を容赦なく突き飛ばした清牙は、地面に倒れた女の子を抱き上げている。
「清牙!」
「ッ…あんた!いきなり何するんだい!!」
母親がヒステリックな声で叫ぶ。
だが、清牙はそんな声も耳に入っていないかのように、抱きかかえた女の子を見て呆然としていた。
とりあえず母親に口だけ謝って、清牙の肩を掴む。
「清牙、何やって…」
「…なんで」
「え?…ッ!?な…」
清牙が不意にもらした言葉に、視線が自然と清牙の抱いている女の子に移る。
一瞬見間違いじゃないかと思った。でも、間違いなんかじゃなくて。
確かに清牙が抱いているのは3日前に警察に迷子として届けて、絶対に親を見つけると約束して託したあの蓬だった。
3日前のあのかわいらしい様子なんて思い浮かべられなかった。
俺たちを不思議そうに見つめていた目は、まぶたが腫れ上がって見る影もない。
清牙に抱っこをせがんでいた手は、擦り傷だらけで、部屋の中をちょこちょこ歩き回っていた足は泥だらけだった。