「酷い親もいるもんだな」

「ああいう人には何言っても無駄だよ。あの子には悪いけど、しつけだって言って押し切られるのが目に見えてる」

 俊也はともかく、颯人が辛辣な言葉を漏らしたのは珍しい。

 だが、それまでだ。

 わざわざ親に文句を言いに行くほどお人よしでもなければ、教育熱心でもない。

 むしろ俺たちは高校生で、そんなこと言ってもあの親がどうにかなるなんて思えなかった。

「あぁ、嫌なもん見ちまった。コンビニ行こうぜ」

「金欠だったんじゃないの?」

「颯人、おごってくれよ~」

「却下。自業自得」

「ケチ!」

 俊也と颯人が歩いていく。清牙はまだあの親子に視線を向けたままだった。

「清牙、行くぞ」

「…」

「おい、清牙」

 肩を掴んだところで、清牙の雰囲気が一変していることに気づく。

 怒りを抑えるかのように拳を握る手は白くなっていて、その視線はあの母親から離れない。