「蓬ちゃん、おばさんのところにおいで」

「…や」

「蓬、ごめんな」

「ッ…やぁあ!!」

 ふるふると首を横に振って、やだやだと初めて駄々をこねる蓬を見た。
 視線が合うと、泣きそうな目が俺を射抜く。

 それでも、離れるしか出来なくて…。

 強引に蓬を自分から引き離して婦警に預けた。

「う…うわぁぁああああん」

「えっと、晴野清牙さんでしたね。見つけた時の状況を詳しく聞かせてくれるかな」

「…はい」

 大声で泣く蓬が、俺に必死に手を伸ばしてくるのを見て、思わず視線を逸らした。

 たった一晩だけだったのに、すっかり懐いてくれたんだろう。俺が連れて行っても泣きもしなかったのに。

 婦警と、広西という刑事が蓬をどこかへ連れてく。

 蓬の泣き声が響き渡って、蓬の姿が見えなくなってもその声が耳から離れることはなかった。