そして翌日、泣く泣く俊也を倉庫において、剣人と桃を連れて市の警察署まで出向く。
まだ寝ぼけている蓬は、どこに連れて行かれるのかもさっぱり分かっていないようだ。
警察署の受付で話を通してもらうと、朝からしっかりとスーツを着込んだ2人の男性と、婦警が1人出てきた。
「はじめまして。警視長の広西です。幼児の保護、感謝します」
「はい。…あの、この子の親は…」
広西と名乗った刑事の顔が一瞬歪む。その表情を一瞬で隠した刑事は、婦警に視線を向ける。
「蓬ちゃん、お兄ちゃんたちにありがとうって、バイバイしようね」
蓬に手を伸ばしてきた婦警に、それ以上踏み込むなと言外に告げられる。
ただの高校生である俺たちには、何もできない。
蓬を婦警に託そうとしたとき、初めて蓬が抵抗した。
俺の首に腕を回して嫌だというように首を横に振った。