その後、しっかり剣人と颯人の名前を覚えたところで、ずっとソファで寝そべって、話に入ってこようとしない俊也に視線が向く。

「俊也、あんたも…」

「俺は嫌だね。どうせ今日だけだろ。そんなちびっこ、すぐ俺らのことなんか忘れちまう」

 俊也は、ふてくされたようにそっぽを向いて、蓬を見ようともしなかった。

 …確かに、俊也の言う通りなのかもしれない。

 こんなに小さいんだ。親元に戻って、大きくなれば、迷子になったことも、俺たちのことも全部忘れてしまうだろう。

 俊也は、1度きりのこの出会いがどうしても受け入れられないらしい。情を移しやすい俊也なりの自己防衛だ。

 そんな俊也の思いなど関係なく、蓬の興味はまだ話していない俊也にしか向けられなくなって、結局近づいてきてくれない俊也に自分から近づいて行った。

 当然、俊也は驚いて起き上がる。

「なんだよ。清牙たちと遊んで…」

「しゅんやおにいたん!」

「ッ…そ、そんな顔したってダメだからな!俺は抱っこしてやんねぇぞ!」

「ん!」

 蓬の方から俊也の足にくっついた。

 もちろん、振りほどくことなど俊也にはできない。

 そして結局…。

「清牙~こいつ返すのやめてここで育てようぜ」

「アホか」

 蓬を抱き上げて、思う存分甘やかした。

 なんだかんだ言いながら、1番かわいがったのも俊也だった。

 今日限り、もう会うこともない。

 誰もが、そう信じて疑わず、小さな子どもを可愛がって一晩を過ごした。