「…今警察に行っても、どうせ夜勤の奴がいるだけだろ。朝になったら連れてく」

「だから、もし誘拐騒ぎにされたら…」

「そうするならせめて電話するだけでもいいから言っとけよ。今日は遅いから、預かるって適当に理由つけて」

「…分かった」

 電話したらすぐ連れてこいとか言われるだろ…。とか思いながらも、渋々財布を手に立ち上がる。

 すると、今まで桃に抱っこされても抵抗しなかった蓬が慌てたようにジタバタし始めた。

「あ…」

 桃が蓬を下ろした瞬間、一目散に俺のもとにやってきた蓬は、俺の服を掴んで不安そうな目で見上げてきた。

 どこ行くの?置いて行かないでとも言いたげな目に、いつの間にか懐かれていたことに気づく。

「…大丈夫だ。すぐ戻ってくるから、待ってろ」

 目線を合わせて安心させるように頭をなでると、戸惑いながらも服を掴んでいた手が離れた。

 不安げな目をしたままの蓬を桃に託して近くのコンビニに向かう。

 公衆電話で110番して事情を説明すると、当然のように今すぐ近くの交番にと言われたが、子どもがもう寝てしまって連れていけないと嘘をついて、明日の朝連れて行くということで何とか収めた。

 名前、住所、電話番号、しまいには高校名まできっちり伝えていたが…。

 コンビニに寄ったついでに適当に飲み物を見繕って倉庫まで戻る。