「その子、どこで拾ってきたの」
「途中の住宅街だ。1人でこんな格好だったから、ほっとけねぇだろ?」
「名前は?」
「蓬だ」
「蓬ちゃんね。蓬ちゃん、上のお名前はなんていうの?」
「…?」
慣れているのか、桃は蓬を軽く抱き上げて、ほっぺを突きながら問いかける。
でも、蓬は首をかしげただけで何も答えようとしなかった。
それにしても、知らない奴に囲まれて抱っこされても泣きもしない。笑いもしないが…。
ふつう、親が近くにいなかったらなくもんじゃないのか…?
桃に抱っこされて、蓬はきょろきょろしながら部屋にいる奴らを見まわしてる。
「清牙、今からでもいいから警察に届けてこいよ」
「誘拐犯なんて言われたらまずいよ?」
剣人も颯人も、拾ってきたというのがどうしても気になるのか、早く面倒事を放り出せと顔が言っていた。
確かに、そうするのが妥当だ。
なのに、なぜか蓬を手放す気になれなかった。