『嫌だね。こいつは、渡さねぇから』

 絶対に、渡さない。守って見せる。

 相手の雰囲気が、戦闘に入ったのがわかる。蓬の手を掴んで、走り出す。バイクの間を縫って、倉庫に近い方へ走っていく。

『逃がすな!!』

 怒号が飛ぶ。それに声に応えるようにバイクがエンジンをふかせる音が響く。

 路地を抜けて、蓬の背を押す。

『走れ!倉庫まで逃げろ!』

『朔夜さんは!?』

『いいから行け!!』

 動こうとしない蓬を無理矢理の方角へ押す。もう、目と鼻の先にある倉庫だ。

 蓬は意を決したように背を向けて走って行った。