『…朔夜さん、走って戻れますか?』

『は?』

『逃げ回るので、総長さんたちを呼んできてください。…大丈夫です。5分くらいならたぶん無傷でいられるので』

 そんなことを言う割に、恐怖を無理に押しのけるような顔で、蓬は笑った。

 不意に頭によぎったのは、先代の言葉。

 蓬を守れ。

 それは、この状況を危惧したもの。
 一瞬でそれを理解して、蓬が嵐鬼の弱点であることが算数の計算のように導き出された。

 暴走族はチームにもよるが、敵対する相手の弱点を狙ってくる場合がある。嵐鬼の場合は、蓬が絶好のターゲットになって…。

 だから、蓬は絶対送り迎えしていたんだ。
 だから、1人で出歩かせないようにこんな近くのコンビニでさえ、幹部に近い人が一緒に行っていたんだ。

 こんな状況にならなきゃ分からないなんて、そんな自分が滑稽だった。

 蓬の肩を掴んで引き寄せる。

 こいつらなんかに、絶対にわたさねぇ。