『あいつは、俺たちと似た境遇のやつを見つけるんだよ。あの日だって、アイス買ってやるって連れてったはずなのに、「あっちにお兄ちゃんがいる。総長と一緒かな」って言って、アイスのことなんかさっぱり忘れちまった。しかたねぇからお前を拾いに行った』

『…拾うって、俺は拾われてなんか!』

『あ、総長さん!』

 女の子が、総長に気が付いて追いかけっこを中断してこっちにくる。

 走った勢いで総長に抱き着いた女の子は、頭を撫でられて笑みを広げる。

『よも、こいつの名前聞いとけ』

『あ、そうでした!晴野蓬です。お兄ちゃんはなんていう名前ですか?』

 無邪気に笑う女の子は、とても人を拾うような感じに見えなくて、大体、俺がこの子に拾われただなんて、信じられなかった。

『…松葉朔夜』

『朔夜さんですね!よろしくお願いします!』

 蓬と名乗った女の子は、俺の手を握ると嬉しそうに笑う。

 よく笑う子だって、そんな印象だった。こんな、暴走族に出入りしてるなんて、そんな顔じゃなかった。