「渉さん、どうしたんすか」

「実家に戻ってたので、様子を見に来ようかと。あ、これお土産なので、どうぞ」

 県外の大学に進学した渉さんは、帰省のたびに顔を出してくれる。そして、手土産も忘れない。

 先輩なのに、決して威張らない。幹部時代からずっとそうだった。

 渉さんの手から土産を受け取った焔が、その場で開封し始める。たっく、こいつは…。

「朔夜、次期幹部で悩んでませんか?」

「ちょうど、悩んでたところですよ」

「なら、丁度良かったですね」

 机を囲んで座るソファの方に移動して、渉さんの正面に腰掛ける。隣で焔が無遠慮に菓子をむさぼってるのは無視だ。

「総長に、雷斗をつけるつもりはないんですか?」

「渉さんもそれを言いますか」

 苦笑いを隠しきれない。渉さんは、微笑んだままだった。