「雷斗は、総長にさせないの?」
「あいつはダメだ。あのまま幹部にとどまらせる」
「どうしてよ。雷斗、向いてると思うけど?」
焔にも言われたばかりだ。
唯一幹部の中で俺たちより年下で、次の代の中では1番嵐鬼にいる期間が長い。そういう意味では、誰よりも信用がある。
ただ、雷斗は帰る場所ができた。
雷斗が嵐鬼に来たのは、居場所を失くしたから。その居場所を取り戻したあいつを、ここに留め置くのは縛ることになりかねぇ。
できることなら、立ち入らない方がいい世界。そこにいる意味がないのなら、あいつをここからできるだけ早く出したかった。
「雷斗を差し置いて、総長を名乗らせる奴の身にもなりなさいよ。朔夜が1番それはわかってるんじゃないの?」
輝星からの厳しい指摘に、何も言い返せなくなる。
俺が総長を継いだのは2年前だ。
つまり、1つ上の先輩を差し置いて総長を継いだ。当時幹部だった、渉さんを差し置いて、幹部でもなかった俺を総長にした先代は、渉さんは導き役だと言って譲らなかった。
その時のプレッシャーは今でも忘れねぇ。
だから、なるべき人を差し置いて上に立つプレッシャーは確かによくわかっていた。