あたしも、最初はもう1人お兄ちゃんが出来たみたいだと思っていたけれど。気付いてしまったのだ。
中学校に上がって、大勢の人がいるなか1人だけなんだか違って見える彼を。
気付いたら視界に入り込んで、目を追っている彼を。
いつのまにか、彼へ向けた感情が恋慕に変わっていたことに。気付いてしまったのだ。
「おお!次はあそこに入っていったよ!!花ちゃん」
「お、おお…お化け屋敷」
つい他の事を考えてしまっていたけれど、堀先輩の声ではっと尾行中だと我に戻る。
2人が中へ入っていくのを見て、あたしはやばいと思った。何がやばいって、お化け屋敷なんて怖いじゃないか。ただ単純に怖い。
堀先輩にあたしが幽霊苦手だなんて言ったら今後どんなに虐められるか。だからつい強がってしまった。
しかもただのお化け屋敷ではない。歩くタイプだ。念仏でも唱えよう、深呼吸はヒッヒッフーだ。落ち着け、落ち着くのだ、花。あたしはごちゃごちゃと物事を考えながら堀先輩の袖を掴みながら中へ足を進めることにした。