「うぎゃっ!……なんだ颯希か」
「ねえねえ、花ちゃん」
「ん?」
「坂田くんの写真、あたしにも頂戴?」
そうだ、忘れてた。
颯希が頬を赤く染めながら話しかけてくる。可愛い。
こてんと首をかしげて小動物ですか、貴方は。なんて。
「いいよー送るね」
「ありがとう。これ見て頑張って話しかける練習するね!!」
「……ウン」
花は坂田くん限定でものすごく恥ずかしがり屋だ。だからものすごくわかりやすい。ものすごく。
例えば。
『日野颯希15歳。今日こそ坂田くんに話しかけて参ります!』
『おおーいってらっしゃい』
『うう…やっぱ無理!!』
別に挨拶ぐらい、おはようのたった4文字だけなのに。彼女にとってはたった4文字でもものすごい勇気が必要なようだ。
話しかけると宣言して数秒。廊下にいる坂田くんの姿を視界に入れた瞬間顔を真っ赤にして挫折していたのはまだ記憶に新しい。