「そんなの、私も同じだよ。私だって、1人じゃ何もできない、弱い人間なんだから。だけど、あの時は、新山さんがいたから頑張れた。きっと、寂しかっただけなんだよ…佐川さんは。もっと、私たちを頼ってもいいんだよ?1人ではないんだから」


怖かった。


言葉の選択ミスで佐川さんの心を傷つけてしまったらと思うと、本当に辛い。


でも、私以上に辛い思いをしてきたんだと、改めて思う。


だって、私の目に映るのは、涙をいっぱい流す佐川さんの姿だったから。


「もう、大丈夫だよ…」


勇気を出して、佐川さんの頭に伸ばした右腕は、触れた瞬間に暖かい心に包まれた。


「ありがとう、っ……」


数年ぶりに見た彼女の笑顔は、あのときと同じ、とてつもなく光輝いていた。