「ちょ、ちょっと待ってよ、永瀬さん…!」


後ろから、永瀬さんに声をかける。


すると返ってきたのは、いい意味で永瀬さんらしくない、なだめるような言葉。


「希美ちゃんはいいの?そんな顔で授業受けても…」


「あたしは、別に……」


涙を拭いて、ほら、大丈夫でしょ?って無理に微笑む。


それなのに、また永瀬さんは私に言うんだ。


「入谷くんもいるのに…?」


「……!」


拓海を使ってくるなんて、ずるい。


だから、口をぷくーっと膨らませて、永瀬さんを睨む。


なのに、にこにこして笑っている。


優しく、微笑んで…


私は、それが不思議で、睨むのをやめた。