「でも、正直、あの状況で永瀬さんに会っても、声を掛けられる自信がなかったんだ」


ゆっくりと、フェンスの方へ向かう。


「拓海がやったことは私たちに気を使ってくれたのか、それとも別の理由があるのかは分かんないけど、少し時間を置いてくれてよかったって思ってるんだ」


空を見上げて微笑む。


これは、本音でもある。


少しの時間があったから、考えられたんだ。


自分のこと。


永瀬さんのこと。


拓海のこと。


私にとって、どんなに大切な存在だったかを気付かされた。


永瀬さんも、拓海も、すごくすごくいい人だから…


私なんかと違って、本当に心のきれいな人だから…


だから、永瀬さんになら、拓海を幸せに出来ると思うんだ。


そう、思うの…