「ないわ。当分ね」 冷たくそう言われたときのお母さんの顔は、今でもはっきりと覚えている。 今までにないくらい切ない顔をしていた。 「そうだよね。ごめん、なんでもない」 笑って、そう返すのが精いっぱいだった。 「じゃあさ、犬のエサ、まだ残ってる?」 「え?多分、押入れにあったと思うけど」 そう言って、お母さんは、押し入れの中をガサガサと探した。