「…永瀬さんっ!」
そんなとき、柏木くんの声が聞こえた。
顔をあげれば、手招きをして呼んでいる。
気持ちを入れ替えようと、顔を叩いてから、小走りで向かう。
「すみませんっ!お待たせしました」
私が着くと、千鶴さんは話し始めた。
「本当は、文化祭でこれを知ったときから、この子にしようと決めていたんです」
「……え?」
「実は、似てるんです…思い出のネコに。勝手な諸事情で決めてしまうのは申し訳ないと自分でも分かっています。ですが、どうしても諦めきれなくて…私も、もう少し強くならなければなりませんね」
ぎゅっとツキを抱きしめるその腕は、かすかに震えていた。
千鶴さんもまた、辛い過去でもあるのだろうか…