「…ありがとう」


「大したことじゃないよ」


柏木くんは笑ってそう言った。


これはハンカチのお礼だけじゃないんだけどな…


なんて、そんなこと気付いてないよね。


君はちょっと抜けているところがあるから…


「…もう、大丈夫だよ」


「そっか、じゃあ行こう」


ハンカチはポケットにそっとしまい込んだ。


洗って返すって言わなくても、それを分かっているかのように、何も言わずに前を歩き出す。


また、借りが1つできちゃったかな。


前を歩く君の大きな背中が、暖かく見えた。