「…そろそろ、行かなきゃね」 柏木くんが言った。 「そうだね」 私がもう1度涙を拭ったとき、大きな手のひらに包まれた四角いチェック柄のハンカチが、目の前に差し出された。 ここには私と柏木くんしかいないから、それが君のものだと気づくのに時間はいらなかった。 「これ、使って?」 「……え?」 もう涙は拭いたから、使う必要なんてないのに… そう思っていたら、ぶらんと垂れている私の腕を掴んで、手のなかに優しく包んだ。