「待って!ヒュー!!」


私は走り去るヒューバートを追って立ち上がろうとした瞬間、血を飲んでしまい、気持ち悪くて吐き気を催し、口元を押さえる。

ジョージは慌てて私を抱き抱えると洗面所に連れて行ってくれた。


「まさか……歯が折れたのか?!」


真っ赤な鮮血の中からジョージは歯を見つけるとさっと水で洗い、再び私の口の中に戻し入れる。


そして、直ぐに屋敷から運転手を呼び寄せ、歯科医のもとへと連れて行ってくれた。


折れた歯は何とか固定され、無事治療は終わる。


「良くこのようなことをご存知でしたね」


歯科医が感嘆しながら治療をする中、ジョージは「たまたまですよ」と淋しそうに微笑んだ。