「ごめん!あああ……アシリア!!ごめん!!俺、なんてことを……」
泣きながら謝り、床に崩れ落ちるヒューバートの頭に手を乗せ私は強く首を振る。
ヒューは悪くない……
そう言いたいのに、口の中は血で満ち、痛みで声が出ない。
「ごめん。ごめんな。アリシア」
ヒューバートは顔を上げると、ジョージを睨みつける。
「お前のことは絶対許せない!絶対にだ!」
ヒューバートはジョージに掴み掛かり、振り上げていた震える拳を力なく下ろすとジョージの服を掴んでいたその手を乱暴に払った。
「ごめん……な、アリシア……。本当に……、本当にごめんな」
私は男の人が泣くのを、ヒューバートが泣くのを初めて見た。
ヒューバートは踵を返すと、そのまま転げ落ちるように階下へと走り去っていった。
後でジョージに聞いて知ったのだけど、ヒューバートは両親の都合でこの日を最後に引っ越すことになっていた。
そして、私はこれを最後にヒューバートとは永遠に会える機会を、謝罪する機会を失ってしまったのだった。