戸口には、信じられないと言った顔をして立っているヒューバートがいた。


「何、やってんだよ!」

そして次の瞬間、叫びながらジョージに掴みかかり、拳を振り上げたかと思うと、ジョージの頬を強打する。

ジョージの体が吹き飛び、壁に激突する。



「やめて!やめて!!ヒューバート!!!」


懸命に二人の間に割って入ろうと、壁際からゆらゆらと立ち上がるジョージの腕にしがみ付く。


「どいてろ、アリシア!」


私を庇うように立つジョージの頬をヒューバートの拳が再び強打する。



「ヒューバート!やめて、もうやめて!!」





私達は二人きりだった。

父さんと母さんを失って、どうしようもなく淋しくて、哀しくて、気が狂いそうなくらい辛い時、いつも側には当たり前のようにジョージがいた。


ジョージは悲しみに耐え、いつも真っ直ぐ前を見て私の手を引いてくれた。


「大丈夫だよ、アリシア。心配しなくてもいいよ。必ずなんとかするから……」


ジョージは父さんと母さんの遺体を集め、葬式を出し、そんな中、幼い自分でもできる仕事はないかと奔走してくれていた……。


私は気付いていた。


ジョージが必死で私を守ろうとしてくれていたことを。