翌朝、気だるい感じにそっと目を擦り、扉を開けようとベッドから起き上がる。


扉のところまで行こうとしたその時、ふと鏡に写った自分の首筋を見てぎょっとして立ち止まり、何度も鏡を覗き込む。



「お嬢様、起きていらっしゃいますか?」



ドアをノックする音に慌てて、ベッドにジャンプし、布団に潜り込む。



「お、起きてるわ」



ノックの後に、髪を高く結い上げ、眼鏡をちょこんと鼻の上に乗せた女中頭のノラがせかせかと足早に入って来る。




「それはよございました。旦那様が朝食をご一緒に、とおっしゃられていますが」

「おじい様、帰ってらしたの?」




おじい様は確か今週いっぱいまでは欧州を外遊されているはずだったのに。


ノラはにっこりと微笑むと、カーテンを勢い良く開ける。