「待てよ!俺の知ってるやつか?!」


「……」


「フジエダか?まさか、まさか……バトラーとか……じゃ、ないよな?」


アリシアは口を真一文字にぐっと閉め、涙を湛えたまま首を横に振る。


「じゃぁ……」

「恋をしてるわ!『必ず抱きとめる!!だから飛び降りろ!!』って走り出した汽車の窓の向こう側から言われた時から。
ずっと、ずーーーーーーっとよ」



アリシアは上目遣いで俺を睨むと「……ドンカン!」と俺の頬をペチっと打つ。



「悔しい。今だって、こんなにドキドキしてるなんて……」



真っ赤な顔をしてアリシアは森の中にパタパタと駆けて消えて行く……。



何が起こったのか理解できないまま呆けた俺の頭は、ようやくアリシアの言葉を処理し始める。




あいつの………………




恋する



男って




まさか…………





………………俺か?!