逃げるアリシアを捕まえ、後ろから羽交い絞めにして……


えっ?!



慌てて、手を離し、じっとその手を見る。



今、なんか……触ったぞ。

……柔らかくて……丸い……モノ。


思考が停止する。


アリシアはクルリと振り向くと、俺を睨みつける。


「ドンカンなジョージにそんなこと……言われたくない……。
私だって、私だって恋ぐらいしてるわ」



アリシアの思ってもみなかった反撃に、さらに俺の頭は真っ白になる。



ピクニックも、さっき覚えたばかりの日本語でさえも、全て、一瞬にして吹っ飛ぶ。



「お弁当は、私がもらって来るから……。先に行ってて」



力なく厨房にトボトボ歩いていくアリシアの腕を咄嗟に掴む。


「相手はヒューバートか!?」


アリシアは、堅く口を結んで、首を横に振る。


「じゃぁ、フジエダ!?」


アリシアは、前にもまして強く首を横に振る。


ほっとする俺を見上げて、アリシアは口を歪める。



「……さっきのは、嘘よ。私は、誰にも恋なんかしたりしないわ……。一生、誰にも……」



淋しそうに項垂れると、俺が掴んだ手を解き、厨房へと入っていった。